淑女失格

淑女たるもの日々是書き留める可し

それは月曜日の物語

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前髪を切った。
たったそれだけだったのに。

大変誉められました!
万歳三唱!万歳、バンザイ、ばんざーい!!

何より嬉しかったのは推しでした。
職場の推しが、あのダウナーでクールな推しが!
嬉しすぎて頭バチ壊れるかと思いました。思いました!!

 

・第一回目

推しのデスクに仕事の依頼を持っていく時、名前を呼びかけ振り向いてくれた瞬間に
前髪の前でハンドシザーをちょきちょき✂︎✂︎
切ったよ!切ったよ!!と言葉を発さぬ大声の主張
前髪切ったくらいで会社の後輩からこんな無言の圧力かけられておそらく推しさんは???になっているに違いない。
実際、

「え?」

って口に出していた。
そんなお茶目なスッとぼけを前にえ〜〜!!と大袈裟に傷ついたふりをすると

「あぁ、切ったん。いや、気づかせてくれよ。
そういうん自分から言うもんじゃないやろ」

だってサ!ぐう正論。

いや、興味なさすぎでしょ。
みんな気づいてくれてますよ!
推しの隣のデスクのHさんが

「俺は朝気づいてちゃんと言ったよ。誉めたしな」

と援護射撃。よくやったH。お前やる時やるやんけ。それをこっちが誉めたるわ。
はい、マスクおろしてみ?ディープキスしたるわ。
このままの流れておまえもほめるんだ、推し!お前なら出来る!やれば出来るって先生知ってる!諦めるな!!
しかしそこから始まったのは

「姫なん?寄せたん?渋谷凪咲に。なぎさってんの?」

怒涛の澁谷いじり。やめてくれ渋谷凪咲女史のせせら笑う声が聞こえそうだ…!足元はおろかか細く可愛い背中すら見えない。
やめてくれ、やめてくれと身を捩りながら嫌がるも止まらない渋谷凪咲いじり。

「テレビで見るたんびに、あぁこの子か〜、思うわ。似てるって言われたんやな」

それはもう生き地獄。
羞恥の業火で腸まで焼き爛れそう。思わず推しに拳を振りかざす。
さすがに殴りはしなかったが震える拳はこれ見よがしに見せつけた。便乗して茶化してくるHさん(取締役)には勿論グーパンをしておく。
乙女の拳を舐めるな。こちとら国際有段証を持つ武闘家やぞ。

隣の席のHさんの茶々にも負けず永遠に推しさんの褒め言葉を待ち続ける。
切ったよ!切ってるよ!まこちゃん前髪切ってるよ!!とこちらもいじりに負けない怒涛の攻勢。ずっと見えないシザーハンズで前髪切ったアピール。
ジョニーデップも驚嘆するレベルのハサミ捌き。
リメイクがあったらオファーくるね、こりゃ。
しかしどれだけ続けても

「俺褒められへんねん。あかんわ、言葉が詰まってる。そういうイップスやねん。」

いや。幼少期に何あってん
ほなむしろそのトラウマはよ直してくれや。気になるわ。あまりの鉄壁の防御にもうええかと思い始めてくる。
推しが思ってるほどこちらもお前に執着していない。
オタクってのは熱しやすく冷めやすい、かっぱと真逆の生き物なのだ。

「いや、私が調子に乗りました。
失礼しやした。」

とデスクを離れようとすると

「ニアッテマスネ。これでええん?」

……っと!!!!!!!!!!!!
カタコトの褒め言葉!!嬉しすぎて思わず破顔して笑って跳ねて喜ぶ私。推しの特大ファンサはオタクの心臓に効く。
あまりの喜びように

「こんなんでええの?言わされてるのに?
めちゃくちゃ言わされてんで?」

と、むしろ引き気味だったが問題ない。


嘘でもいい。

推しさんからもらえた言葉は苦い珈琲に入れる
甘い甘い角砂糖のように心にこくこくと溶け込んですごく私を幸せにしてくれた。

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・二回目

残業中、別案件を持っていこうと先にメールで資料を送りデスクに向かうと楽しく談笑中。
推しの幸せ is オタクの幸せ
僕は貴方の平穏を壊さない、てかむしろ守る。
まもーるまもるよその笑顔。

他案件を処理していると聞き慣れた
草臥れて少し踵をする足音が近付いてくる。

「メールきてたぞ」

推しが私の掃き溜めのようにクソ汚いデスクに……!毎回なんだが推しと話せるたびに嬉しすぎて特大ビック笑顔。マスク外れたらおそらく俺は警戒されて粛清される。今から3月13日が恐ろしい……!

てけてけとペンギンの親子よろしく推しさんのデスクについてゆき仕事の話や雑談をしていると不意に推しが口を開いた。

「やっぱり、なんかまこさんじゃないみたいやなぁ。ほら髪切るとね、印象変わるって言うからね。あどけなくなるというか、
おぼこなったな。

これでええか?
これで百点でしょ?
満点の感想やろ?」

だ、なんて!だなんて!!!

素直ではなく、照れ屋で、ツンデレで、ぶっきらぼーな推しさんが冗談混じりの口調でようやっとくれた褒め言葉。

嬉しすぎて声にならなくて、ただただ笑顔で何度も頷くしかなくて。

これでええやろ?

と言われた時には思わず胸の前で自分の両手をひしひし握りながら何度も何度も頷きました。
ええってもんじゃない。予想とか想像とか遥かにこえてるし、何より何より不意打ちすぎて。
話したいのに言葉が出なくて、
あっ、あー…、その。ごめんなさい。
オタクムーブをかましまくる
その上嬉しさのあまりインキャオタク、ブログ書いてることと自分の顔面でマッドサイエンスしたことを明かし困惑される。
インキャ生きづらすぎわろた

その後も変な話をしながらも

毎朝遠いのにちゃんと髪とか巻いてすごいなって思ってるよ

追加砲撃を喰らう。ここは前線か?その量の爆撃は私の持ってる防空システムではうちおとせぬ。私ばかりが蜂の巣になっている。嬉しくて嬉しくてキャアキャアと喜んでいるとさすが推し。
ちゃんと落とすことも忘れない。

「俺けどKちゃん(同僚)が髪の毛切った時は気付いたわ。言うたしな。切りましたねって」

なんやねんそれ!私にどんなけ興味ないねん!と思わず突っ込んでしまった。いじけて見せて、

「羨ましすぎて死にそうです」

と言うと

「何でやねん」

と一笑に臥された。
はぁーー!!その乾いた笑いも少し掠れた素敵な声も全部全部正義、正義、正義!
ジャスティスの塊!!!ジャスティスビーバー!


その後も興奮冷めやらず
嬉しいって気持ちが身体中を駆け抜けてちっとも私を落ち着かせてはくれなかった。残業中ずっとニコニコ、ニコニコ口角は緩みっぱなしだったとサ。


推しの力すごすぎ
本当推しさん尊いです